終の住処

磯崎憲一郎『終の住処』、新潮社、2009

微妙な小説。寒々とした生活の、淡々とした心象風景の描写がえんえんと続く。といっても、べとべとした嫌らしい文章ではなく、乾いた感じの文章なので、読んでいて嫌な感じはしない。

それにしても、結局他人のことはわからない、わからなくても別に差し支えはない、という当然のことを再確認させられる。主人公が少しだけ自分の生に意味を見いだせるのは、仕事のわずかな機会だけ。まあ、それがあるだけましか。それすらない生活をしている人はたくさんいるのだ。

家に帰ってみたらいつの間にか娘はアメリカに行っていて、家から消えてしまっていたくだりもまぬけで冷え冷えとしていていいと思う。こういう話は自分の感覚にはあっているかもしれない。

ただしもう一本の「ペナント」はあまり面白くなかった。