細川家の至宝 珠玉の永青文庫コレクション

「細川家の至宝 珠玉の永青コレクション」、東京国立博物館

細川家所蔵の文物を維持管理する永青文庫の所蔵品展。前半が歴史展示で、中世細川家(これは京兆家ではなく、和泉半国守護家のほう)から近世大名細川家の歴史を示す文物の展示。主に甲冑と織田信長豊臣秀吉徳川家康らからの感状や朱印状、ガラシャ夫人の手紙、書画、能、和歌、茶の関連道具類。

後半は永青文庫創立者、細川護立の収集物の展示。白隠、仙厓から刀剣類、細川護立の同時代画家だった菱田春草横山大観、小林古経といった人たちの作品、ルノワールセザンヌ、東洋美術などの広範な作品が並べられている。

非常にいい展覧会で、前半は大名家としての財力や文化を見せつけられ、後半は、華族になってから美術収集家になった後の細川家の「目利き」の様子がよくわかる。白隠も前に福岡市美術館で見たものとは、格段に優れたものが集められていた。細川護立が収集を始めた頃は、白隠を集めている人など誰もおらず、1000点ほど集めた作品から300点を精選して残してあるのだそうだ。

永青文庫の現理事長は、元首相の細川護煕で、細川護立の孫にあたるのだが、オーディオガイドに細川護煕のあいさつや祖父のエピソードが収録されていて、これもおもしろかった。白洲正子が細川護立を美術収集の師に仰いでいて、「誰それの刀のつばが欲しい」と白州が細川にせがんだところ、本物ではないものが来て、白州が「あれは違うでしょう」と文句を言いに行ったら、「ばれたのでは仕方がない」と本物をよこした。しかし満足しない白州は「嘘をついたのだから、これもください」といって別の貴重なつばも持って行ってしまった、というような話。

美術収集というものの奥行きを垣間見せてくれるような展覧会で、2時間半ほど歩いてけっこうクタクタになった。これは後で京都と九州の国立博物館にも巡回するようなので、また行くかもしれない。