最初の、ひとくち

益田ミリ『最初の、ひとくち』、幻冬舎文庫、2010

益田ミリの食エッセイ。わたしは、この人の本は『すーちゃん』しか読んでいなかったのでまんが家専業の人かと思っていたが、文章も書いていたのである。

食エッセイといっても、「昔食べたものの思い出」系の文章が多く、1969年生まれの著者の食べ物の記憶は、自分のものと相当かぶっていて、読んでいてなつかしいというか、気恥ずかしいというか、ふくざつな気持ちがする。

マンゴーは小学校6年生のときにはじめて食べて、とあるが、そのころはマンゴーは本当に珍しく、果物屋にもめったにおいてあるものではなかった。まあ今でもぜーたく品ではあるが、だいたい昔は果物はどれもこれも結構お高いもので、今のように気軽にホイホイ食べられるものではなかったのだ。サクランボを生で食べたのは、小学校3、4年生の時だと書いてあってそれも納得。サクランボは缶詰に入っている、赤く着色されたものと相場が決まっており、生のサクランボなどわたしも食べた記憶はほとんどない。まあ今でも佐藤錦は高いけどね(アメリカンチェリーは、サクランボの形をしただけで、サクランボではないと思っている)。

フルーチェとか、アイスケーキとか、いまはもうはやらなくなってしまった(フルーチェはまだ売っているが)食べ物もなつかしい。フルーチェは、牛乳を入れてかきまぜるという斬新な企画の上、プルプルした食感がめずらしく、大好きだったのだ。ホットケーキをママレンジで作ったエピソードも入っていて、ママレンジをものすごくほしかったのに買ってもらえなかったわたしには相当うらやましかった。確か、以前「探偵!ナイトスクープ」で、「ママレンジで本物のホットケーキを作ってほしい」という依頼があり、林先生が火力の小ささに苦労して作っていたような記憶が…。

著者と年代の近い人、特に関西の人にとってはむちゃくちゃポイントを刺激されると思う。忘れていたように思えることでも、食べ物の記憶はそれだけ強いということかもしれない。