日本万国博

日本万国博」、谷口千吉総監督、日本万国博映画配給株式会社、1971

大阪万博の記録映画。たっぷり3時間近くある。はじめに「文部省特選」の文字ががーんと出てくる。冒頭は、まだ整地中の千里丘陵を空撮しているところから始まっているので、記録映画の製作も万博のプログラムに最初から入っていたということになる。

開会式では、まず君が代斉唱。佐藤総理のあいさつに続いて、何人かがあいさつを述べ、天皇陛下のおことば。当時の皇太子殿下(まだ若いよ・・・)がスイッチを押すと、お祭り広場いっぱいに紙吹雪が舞う。座っている客の服は紙吹雪だらけ。すごい量だ。

後は外国パビリオンの紹介に、毎日なにかしら行われていたいろんな行事、裏方のスタッフの仕事、混雑の様子、などなどが続き、それから日本の企業パビリオン、日本館、それから閉会式。

万博にはたしか2回か3回は行ったはずなのだが、何をしたかはさっぱり覚えていない。この映画を見るとそれも当然でとにかく殺人的に混んでいたのだ。180日ほどの会期で6000万人以上の入場者があったのだから、むちゃくちゃ混んでいる日と、ちょっと混んでいる日があっただけで、空いている日というものはなかった。しかも人気館ほど混んでいるので、そんなところには絶対入れなかった。アメリカ館とソ連館はすごいことになっていて、特にアメリカ館の「月の石」が見たい人が長蛇の列。ここは終わりに近い時間でも絶対すいていなかった。

たしかドイツ館とかフランス館とかには行ったはずなのだが、これも終わる前の短い時間に駆け足でまわったので、記憶なし。この映画を見ると、ベートーヴェンの音楽やら前衛美術みたいなものやらが展示されていて、子供がよろこぶわけがない。

どうしても行きたかったのが自動車館の自動運転の交通システムだったのだが、たしかこれにも乗れなかったような気がする。企業館の人気のあるところも、それはそれは混んでいた。この映画を見ると、フジパン・ロボット館とか、ガスパビリオンとか、みどり館とか、形が奇抜だったパビリオンは覚えているが、中に何があったかは記憶があいまい。みどり館の巨大スクリーンはもしかしたら見ていたかもしれない。

人間洗濯機とか、空中レストランとか、将来は絶対あると思っていたが、あんまり流行らなかった。まあお風呂はひろい湯船にゆっくり入った方が気持ちいいし、空中レストランは、いったんカプセルに入ってしまうと途中で追加注文とかができないので不便なのである。

個々の部分はあんまり覚えていないのだが、この映画全体に漂う「70年代」の雰囲気は強力に伝わってくる。昔はほんとうに、21世紀になれば、日本中万博会場みたいになっていると思っていたのだ。すなおなよいこだったのである。

音楽は間宮芳生で、非常にカッコイイ。ナレーターは石坂浩二と竹下典子。万博の公式ガイドブックは穴が空くほど読んでいたが、映像がこういう形で存在して、それを今見ていられるところがすごいと思う。ちょっとざんねんだったのは、「人類の進歩と調和~」と歌を流しながら、会場を回っていた電気自動車が映っていなかったことと、三波春夫の「世界の国からこんにちは」が流れていなかったこと(こっちは、他の歌手も競作していたのでしかたがないらしい)。

いまはエキスポランドもなくなって、記念公園に太陽の塔とかそういうものが立っているだけである。でもこの映画を見ると非常に行きたくなってきた。今年はきっと行くことにしようと思う。