「超」納税法

野口悠紀雄『「超」納税法』、新潮文庫、2004

税金についての本。といっても、通り一遍の税制の概説書ではなく、給与所得者としての納税と、法人をつくった場合の納税がどのように違うのかを子細にわたって説明している本。

なぜ法人組織にすると税制上有利になるのかということが、細かく、わかりやすく述べられていて納得。ただ、普通の給与所得者がこの方法をとることは、勤務先がこのような形態(勤務先の会社と業務委託契約を結ぶということになる)を認めるかどうか、また所得水準が1000万円のレベルをどのくらい上回るかで決まるとのこと。

自分の勤務先がこういう労働形態を認める可能性はないので、個人的にはとれない選択肢だが、法人組織にすることのベネフィットとコストがよくわかったし、何より給与所得者が税金のことをほとんどわかっていないということを改めて認識させられた。

著者の主張は、有権者の多くが「税金のことは考えても仕方がない」という制度になっていることが社会を歪めているというものだが、まったくそのとおりだと思う。本当にこれを変えるためには、給与所得者控除を廃止するか著しく狭めて、給与所得者も申告納税をさせるようにしなければいけないのだが、それは政治的にほとんど不可能なので、個々の給与所得者が法人をつくって節税するケースをどんどんつくっていくことが必要だ、というのが著者の結論。

なぜ赤字法人が多いのか、零細法人の所得捕捉率が低いというのは本当なのか、等、これまであいまいに考えていた疑問に対する答えが出たことも非常に勉強になった。相続税についても、増税が必要だと言われている理由は何か、なぜそれができないのか、について多くのことがわかった。きちんと理解しようとすると熟読しなければならない本だが(税制の細部を理解するのは流し読みでは無理)、多くの人に読まれるべき本だと思う。