興亡の世界史13 近代ヨーロッパの覇権

福井憲彦『興亡の世界史13 近代ヨーロッパの覇権』、講談社、2008

講談社から出ている「興亡の世界史」シリーズのヨーロッパの巻。このシリーズは、時代ごとにくぎるのではなく、地域文明ごとに巻を分けているところが特徴で、この巻に近いものだと「ロシア・ロマノフ王朝の大地」「東インド会社とアジアの海」「大英帝国という経験」などといった構成になっている。

この巻は、大航海時代から第二次大戦までのヨーロッパ史を包括的に書き、エピローグでは欧州統合まで触れるという大風呂敷の構成。とはいっても、福井憲彦が書いているので、書き方にはすきがない。フランス革命のような自分の専門分野についてはむしろあまり紙幅を割かず、経済、社会、文化の変化に多くのページを割いているところがいいと思う。特に国民国家ナショナリズム帝国主義三者を論じた章では、リベラルなナショナリズム帝国主義的なナショナリズムは断絶しているのではなくて、ちゃんとつながっていることを強調していて、貴重な指摘になっている。

全体としていえば、ヨーロッパの拡大が持つ光の部分よりも影の部分を強調していて、それがいまどきの流行りだからそんなものかと思うが、しかたないか。