目からウロコの琉球・沖縄史

上里隆史『目からウロコの琉球・沖縄史』、ホーダーインク、2007

これは非常におもしろかった。琉球・沖縄史のトピックがいろいろと取り上げられている。主に明治あたりまでの時期だが、沖縄戦やその後の時期についても多少は触れられている。トリビアルなことも触れられているが、古琉球から琉球王国の歴史がひととおりわかるように構成されている。著者は、琉球史を専門にする歴史研究者で、それぞれのトピックには、参照すべき本や論文が紹介されているので、内容に間違いはないだろうと思う。

著者は、歴史学では常識になっていることが、一般社会であまりにも誤解が多いことを正すためにこの本(もとはブログ)を書いたといっているが、「武器を持たない島=琉球」とか、「薩摩藩による徹底的な琉球の搾取」とかいった話が事実と異なる思い込みだという指摘は、琉球史についてのちゃんとした本を読んでいなかった自分にとっては非常に新鮮だった。

また琉球の「中国化」はむしろ薩摩藩の統治下で進展したこと、現在琉球の伝統と見なされていることのほとんどは薩摩藩統治下での琉球の「農業改革」以後に生み出されているといった基本的なこともほとんど初耳。文化史についての知識も新鮮だった。

著者のいうとおり、沖縄については「近代以後、第二次大戦後に生じた思い込み」があまりにも強すぎるようだ。またそういう傾向は本土の人間だけではなく、当の沖縄県民にもあるらしい。無知はコワイと再認識させられた。