空を見てますか 5 言葉と音楽のアツイ関係

池辺晋一郎『空を見てますか 5 言葉と音楽のアツイ関係』、新日本出版社、2009

池辺晋一郎のエッセイ集。なんというか、微妙な本。というのは、エッセイは仕事の内容についてのものだけでなく、時事問題、というより政治問題についても書かれており、その部分は自分にはとても受け入れられないものだから。

もちろん、音楽についての部分はおもしろい。トーク同様、筆も達者である。最初の部分は、エッセイとは別で、合唱曲の講習会でのスピーチがそのまま採録されているが、歌の中での歌詞と音の関係が非常にわかりやすく説明されている。この部分だけでも読んでよかったと思う。

しかしこの合唱曲からして「私たちが進みつづける理由」というタイトルで、中身はイラク戦争反対というもの。詩はアメリカ人が書いたものだが、翻訳が堤未果。これだけで、げっ、と思う。しかもエッセイの中で政治問題を取り上げているものが三分の一ほどもある。池辺晋一郎は、政治的には薄甘いサヨクなので、その部分は読むに堪えない。

それにしても、なんでこんなに政治問題をたくさんとりあげているのか、と思ったら、あとがきと奥付を読み終わった後で気がついた。このエッセイは「うたごえ新聞」に連載されているもので、うたごえ運動の機関紙、要するにキョーサントーである。だからこの内容であたりまえなのだ。この連載は長く続いているらしく、93年からやっているらしい。出版社が新日本出版社という時点で気がついているべきだったのだ。

池辺先生のNHKに出している顔の部分しかよく見てなかったのでわからなかっただけ。かといって捨てるには惜しい本。まあ微妙なところ。