ブロークバック・マウンテン

アニー・プルー(米塚真治訳)『ブロークバック・マウンテン』、集英社文庫、2006

たまたまこの本を図書館で見つけて借りることができた。映画は公開時に見たので、もう三年前になる。しかしこの原作は真の傑作。この原作にしてあの映画があったのだ。著者のアニー・プルーについてはまったく知らなかったが、訳者あとがきでこの小説を書くにふさわしい人だと知った。他の著書も数冊翻訳されているようなので、機会を見つけてぜひ読んでみようと思う。

映画は普通の尺だったので、原作がこんなに短いとは思っていなかった。大きめの活字で80ページもない分量。しかし非常に濃い密度と緊張感のある小説。映画の情景が脳裏によみがえってくる。あの自然を描くことが小説そのものにとって大切なことだったのだと読んでわかった。

訳者あとがきは非常に丁寧で、著者紹介から、映画と小説の異同、小説の読みどころまできちんと書いてくれている。今年手にとって一番よかった本のひとつ。