中国が予測する”北朝鮮崩壊の日”

綾野(富坂聰編訳)『中国が予測する”北朝鮮崩壊の日”』、文春新書、2008

著者は中国軍の現役の軍人で、中国国防大学所属だという。当然ペンネームである。

読んでみると、北朝鮮が遠からず崩壊する可能性が高いと考えている一方、北朝鮮が中国の頭越しにアメリカと直接交渉して、これと手を握ることを非常に警戒していることがわかる。アメリカにとって、取るに足らない北朝鮮核兵器など脅威ではなく、むしろ中国こそが脅威だから、アメリカも北朝鮮と手を握って中国を牽制しようとする動機があるのだ、という。穿ちすぎな印象もあるが、中国が北朝鮮を信用しないがゆえに、北朝鮮を懐柔しようとするというのは、両者の関係の解釈として理にかなっている。

日本についてはさんざんにこきおろしており、「日本の北朝鮮外交は無力」「日本の北朝鮮情報は、ちぐはぐで内容が薄く、このような情報に基づいて行動しているから、まともな政策がとれない」と断じている。まああながち当たってないこともない。

北朝鮮の将来を決める問題が後継者であることは、当然重視している。結局北朝鮮は時間との競争をしているのであり、その競争に金正日が勝てるかどうかはわからないから、中国は北朝鮮との長期的関係を考え直す必要があるという考え方は、当然公には言わなくても中国の指導層ではある程度共有されているだろう。中国の北朝鮮に対する視点の一つを知る材料として読んでおくべき本。