釈迦

瀬戸内寂聴『釈迦』、新潮文庫、2005

題名通り、お釈迦様の伝記小説。釈迦入滅の最後の一年に弟子のアーナンダが語る形式で書かれている。昔のエピソードも順を追って回顧されていて、釈迦の生涯を物語るようになっている。アーナンダを誘惑する女たちや、釈迦とヤソーダラーの話、釈迦たちを供養するアンバパーリーの話など、女の煩悩の話が頻出するところはさすが寂聴。

釈迦の描き方は、人間であり、覚者である出家者。著者が釈迦によせている尊敬と共感がよく出ていると思う。晩年の釈迦だから、体もそれなりに参っている。茸料理を食べて食あたりを起こして入滅するところの描写は泣けるものがある。それでも自らの死を覚ってそれに向き合う釈迦の姿は、まさに覚者のもの。小説ではあるが仏典準拠なので、読みやすい釈迦の生涯としていい本だと思う。