徳川慶喜家の食卓

徳川慶朝徳川慶喜家の食卓』、文藝春秋、2005

この著者の前著『徳川慶喜家へようこそ』は読んでいたので、こっちはどういう内容かと思ったのだが、半分は著者自身の料理エッセイで、後の半分が徳川慶喜や著者の母の徳川和子氏(会津松平家の出身)、高松宮喜久子妃(著者の叔母)らの食事についての記述。

著者自身はまったくふつうの人だから(1950年生まれなので、すでに公爵家の財産はほとんど消えてなくなっている)、本人自身についてのエッセイはまるっきりふつうで取り立てていうようなものではない。

徳川慶喜や著者の母世代(徳川慶喜の孫世代)の食事の記述はそこそこおもしろかった。幼少期は厳しくしつけられているので、食事に文句はいわない、大名、華族だから、母の味というようなものはない、料理は宴会料理以外は豪華ではないが、材料が吟味されているので非常に高価、等々。徳川斉昭から慶喜への手紙もおもしろい(これは別に出版されているようなので、今度読んでみることにする)。

大正から昭和あたりでの、中級以上の華族の生活がどういうものだったかについて知りたいのだが、こちらは片鱗くらいしかわからなかったので、ぼちぼちと本を探してみなければならない。それにしても、日本のように歴史的な有為転変が激しかった社会で、財産のある家がそれを維持したまま4代以上続くのは非常に大変だということはよくわかった。まあそういう家に生まれるのもいいことかどうかよくわからないし。