悶々ホルモン

佐藤和歌子『悶々ホルモン』、新潮社、2008

今年初めの新聞の書評欄に出ていて、おもしろそうなので買おうと思っていたが、結局図書館の予約が回ってくるまで待つことに。さすが予約がいつも埋まっているだけのことはあり、文句なく面白い。基本的にホルモン屋紀行の本なので、食い物をうまそうに書いているところはきちんと押さえてあるがそれだけではない。

微量の色気とさわやかな友人関係と師弟関係が行間ににじみでていて、何とも言えぬよい後味が残る。著者の肉好き、酒好き、そして男前な性格の賜物。文章も達者な人である。友人に持ちたい女子とはこういう人のことだろう。

肝心のホルモンだが、これで一冊書くだけのことはあり、なんでも食べている。豚や山羊の脳も平気。わたしは以前羊の脳の煮込みを食べ、非常にうまかったのでぜひもう一度、と思ったらしばらくして狂牛病の大騒動が起こり、以後二度と脳には手が付けられなくなってしまった。その点著者はさすがである。また、馬の直腸を塩で食べていて、洗っているとはいえ、そこはかとなく直腸の残りカスの味がするのをんまいんまいと食べている。わたしも本を読んで行ってみたが、さすがに塩で食べるのは気後れがしたので、みそだれで食べてしまった。ヘタレである。

まあ行った店(博多、天神ホルモン今泉店)は文句なしによかった。この調子でぜひ続編を出してほしい。地方の店も増やしてくれるといいな。