経済倫理=あなたは、なに主義?

橋本努『経済倫理=あなたは、なに主義?』、講談社、2008

これは非常に「あたり」の本。タイトルには「経済倫理」とあるが、それを中心にして、広く社会、政治思想も含む広い範囲での社会思想の入門書。この本が類書と違っているのは、さまざまなイデオロギーの内容を順に解説していくのではなく、まず読者にいくつかの質問を投げ、その答えで読者をそれぞれのイデオロギーに位置づけてから、イデオロギーの関連性を論じていくというスタイルにある。

最近の経済倫理問題(派遣社員グレーゾーン金利、たばこ規制、ホワイトカラー・エグゼンプション)、ジェイコブズ『市場の倫理、統治の倫理』の再検討、「左派右派」分類の再検討、価値観パターンの国際比較、といった非常に豊富な内容がわかりやすく展開されている。

読者に自分のイデオロギーを認識させ、それを他のイデオロギーと対比させることで鍛えていくという著者の意図は十分に実現されている。なにより、読んでいてぐいぐいひきつけられるおもしろさがある。経済思想、政治思想の入り口として、とてもよくできた好著。