中国、核ミサイルの標的

平松茂雄『中国、核ミサイルの標的』、角川oneテーマ21、2006

中国の核兵器開発史と核戦略の概略について書かれた本。毛沢東が「アメリカの核兵器は張り子の虎」とハッタリをかましながら、実際には通常戦力の更新を遅らせてでも全力で核兵器開発を急いだ過程をはじめ、核兵器開発に関するソ連との協力関係の破綻、金門島砲撃事件の背景、宇宙開発と核兵器開発の関連性、対台湾戦略など、人民共和国成立以後の中国の軍事史核兵器開発と結びつけて説明されている。

分厚い本ではないが、非常に中身の濃い本。中国の核兵器開発計画が一貫した強力な意思の下に遂行されてきたことがよくわかる。巻末に付された人工衛星打ち上げと核実験の一覧表も興味深い。

アメリカを攻撃できる非脆弱な中国の新型核兵器は2010年頃から実戦配備が可能になり、台湾問題における中国の軍事的威嚇の基盤はますます整備されることになる。巻末で著者は、日本も中国の核兵器の政治的意味を無視できる状態ではなくなっていることに言及している。重要な指摘だと思う。