南北朝の動乱

森茂暁『南北朝の動乱 戦争の日本史8』、吉川弘文館、2007

『蒙古襲来』の続巻で、南北朝時代を扱う。時期は正中の変から足利義教あたりまで。

この時代の出来事を手際よくまとめていて、研究史の主要な文献にもていねいに言及しているので、南北朝期の研究に手を付けようという人にはよい本なのだと思うが・・・。軍事史上の問題にほとんど触れていないので、その関係で新しい発見がない。もっとも元寇の時期から南北朝期に軍事史上の大きな変化があったとも思えないので、そのあたりを書く必要がないというだけかもしれない。あえて言えば、打ち物での接近戦よりは、弓を使った遠射が基本戦術で、その点は前の時代と同じということくらいか。

本全体では、観応の擾乱から南北朝の合一くらいまでの期間に比較的力点がおかれている。個人的には、正中、元弘の変あたりに一番興味があるので、そこが薄いのはちょっと悲しいが、観応の擾乱の背景や、尊氏方と直義方の路線の違い、支持勢力などについて詳しく書かれていた部分は参考になってよかった。

歴史の本を読むのにこういうことを言ってはいけないが、史料を頻繁に引用される(原文で)のは読みづらい。やはり自分は歴史家には向いていないようだ。