世襲議員のからくり

上杉隆世襲議員のからくり』、文春新書、2009

世襲議員問題のタイムリーな解説書。カバン(政治資金団体)、ジバン(後援会組織)、カンバン(名前の継承による知名度)の三つの側面から、世襲議員がどのように選挙で有利な地位を獲得するかについてのべている。最も重要なのは後援会組織であり、選挙マシーンが政党でなく個人に属しているために、候補者の世襲と後援会組織の維持が相互補完的な関係になって世襲議員を生み出していることが説得的に述べられている。

政治家が資金管理団体を使うことで政治資金を無税で相続できることは、他の職業と比べても不当に有利な取り扱いで、早急に法律を変えて、実効的な規制をする必要があるだろう。しかし後援会組織と知名度については、法律で規制していくことは難しい。またこの問題の規制は世襲議員を大量に抱える自民党にはほとんどやる気がなく、それが相対的に少ない民主党にしかできないようだ。

世襲議員といっても、デキのいい人と悪い人がいると思うが、前半に出てくる、安倍晋三福田康夫麻生太郎のエピソードはいかにもひどすぎる。また、世襲で政治家が「家職」化することが、政治への有為な人材の供給を阻害していることを考えると、早急な制度改革はどうしても必要だ。民主党が政権を取った時に、法律的にできることは全部やっておく一方、候補者選抜の方法を公開された競争的なものにしていかなければならないだろう。