広重と歩こう 東海道五十三次

安村敏信岩崎均史『広重と歩こう 東海道五十三次』、小学館、2000

広重の「東海道五十三次」の全部の図版にそれぞれ解説がつき、それに当時の旅や宿駅についてのエピソード、宿駅の現在のようすがついている本。広重が描いた場所とおぼしきあたりには写真がついていて、実際の風景がどういうふうにデフォルメされているかがわかるようになっている。最後の京師、三条大橋の図は、この角度で三条大橋を見ると(視点は橋の北西側)比叡山が見えるわけはないのだが、見どころを一枚の絵に入れるように、いろいろと工夫されている。

読んでいると当時の旅の大変さ(それでも中世の旅に比べれば、ずいぶんと楽になっていたのだろうが)がわかるのだが、今でも五十三次を徒歩で走破しようとしている人がけっこういるということがわかって驚いた。昔の人は江戸から京を二週間で歩いたというから、一日三十キロから四十キロは歩いた計算になる。それには遠く及ばないだろうが、休みの日を見つけては何年もかけて東海道を歩くのである。山道が比較的少ない分、四国の歩き遍路に比べればましかもしれないが、なまなかな思いつきではできないだろう。でもこの本を読んでいると、全部はムリでも実際に現地を歩いてみたいという気になってくる。三条大橋から大津、うまくいけば草津くらいなら歩けないことはないか。日本橋から品川、川崎あたりでもなんとかなりそうだ。今度時間を見つけて試してみよう。