わかりやすく<伝える>技術

池上彰『わかりやすく<伝える>技術』、講談社現代新書、2009

池上彰は難しいことをわかりやすく説明するプロだが、その方法を縦横に語った本。言いたいことを他人にわかりやすく伝えることは、技術の習得と実践の積み重ね、それに下地になる勉強をしっかりすることだという、基本的だがなかなかできないことがよくわかる。

著者がNHKの記者からキャスターになり、局を出て民放に出るようになったひとつひとつの経験が、この説明のスキルを磨くことにみな役立っていることに感心。特に民放のニュースやワイドショーの司会者(みのもんたとか、久米宏)が伝える技術をどのように駆使しているかについての著者の観察がするどい。プロはちゃんと人の技からまめに学んでいるのである。

パワーポイントの作り方や、話し方、使うべき、あるいは使うべきでない日本語についての実践的な章は、自分の話の悪いところがはっきり自覚させられて目からウロコ。発表の準備も漫然とやっているのではダメで、気をつけるべきポイントを押さえてしなければならないことを改めて自覚させられる。他人にものごとを説明する機会が少しでもある人にとって必読の良書である。