テキストブック 現代司法 第5版

木佐茂男、宮沢節生、佐藤鉄男、川嶋四郎、水谷規男、上石圭一『テキストブック現代司法』第5版、日本評論社、2009

主に大学生向けの日本司法制度のテキスト。法科大学院裁判員制度などの最近の司法制度改革の事情を入れて書き直されている。初学者用の教科書なので、常識的なこともいろいろ書かれているのだが、個人的におもしろかったのは、裁判官のキャリアシステムと人事統制。

すでに言われていることではあるが、最高裁事務総局の権限がどのくらい強いのか、エリート裁判官は裁判の現場にはほとんど出ないで、ほとんど最高裁事務総局や法務省などの司法行政畑を歩き、東京高裁や大阪高裁の長官ポストを経て、最高裁判事というコースをとっていること、1960年代から70年代にかけて自民党最高裁に対して「偏向判決是正」への圧力をかけていたこと、裁判官の任期制や任地、昇給が裁判官のコントロールに対してどういう役割を果たしているかということ、等が事例を挙げて説明され、非常に興味深い。長沼ナイキ訴訟で自衛隊違憲判決を出した裁判官の末路なども書かれていて、もの言えば唇寒し裁判所、の実態がよくわかる。

裁判官人事も司法改革の一環で一定の透明化措置が図られるようだが、それが「裁判官の独立」に実際に影響を与えるのかどうか、大変興味深いネタである。