北朝鮮の食糧危機とキリスト教

富坂キリスト教センター(編)『北朝鮮の食糧危機とキリスト教』、新幹社、2008

キリスト教組織による北朝鮮に対する人道援助活動に関する本なのだが、2008年の出版にしては掲載されている内容が古すぎる。主に2000年以前の状況を扱った文章がほとんどで、なぜ最近の活動(活動できない理由があるのならその理由)について何も言及していないのか、理解に苦しむ。

また、簡単に予想できることだが、このキリスト教会のメンバーは北朝鮮についてきちんとした知識の蓄積がない。北朝鮮キリスト教会(と称するもの)との交流を図っているようだが、本書に所収の重村智計の原稿では、「北朝鮮キリスト教会は、韓国のキリスト教会に浸透するための労働党統一戦線部の道具にすぎない」と一蹴されている。結局、この教会関係者の頭にあるのは、戦前の植民地時代への謝罪意識と日米同盟の北朝鮮に対する対抗政策への怒りだけであり、今日ではもはや問題にならないレベルのものでしかない。

資料的価値があるのは、この団体が出していた「朝鮮食糧危機ニュース」というニューズレターの部分である。これも1997年から1999年までの発行分しか載せられていないのだが、その後の部分がない理由はわからない。内容は、ほとんど「ハンギョレ新聞」およびドイツ他のキリスト教系援助団体が出した資料の翻訳である。北朝鮮の食糧危機が最も厳しかった時期のようすを垣間見ることができる。しかし、本当に知りたかったのは、その後状況がどのくらい改善されたか、または改善されなかったか、なのだが・・・。