世論調査と政治

吉田貴文『世論調査と政治 数字はどこまで信用できるのか』、講談社+α新書、2008

著者は朝日新聞社史編修センター員。98年以後は世論調査センターで調査の設計、実施に携わっていたとあるので、調査の専門家である。内容は、「調査を行う側からの、調査の内情公開」というような本。それほど目新しいことが書いてあるわけではないが、調査の変遷についていろいろな情報が盛り込まれていて参考になる。

例えば朝日が2007年に実施した調査は、郵送が一回、インターネット調査が(連続調査として)一回、ほかは全部RDDである。面接調査の回収率が5割前後まで落ちているのでしかたがないといえばそうなのだが、ほとんど全部がRDD方式の調査で、それが平均して一ヶ月に2回以上の頻度で行われていると、調査の数字に皆が振り回されるのも当然という気はする。

もちろん著者の意図は、調査の方法について多くの人々に知ってもらうことで調査の読み方を身につけてほしいというところにある。特に選挙情勢調査は生の数字ではなく、調査主体の分析が強く入っているので、推計の基本的な方法や、予測が外れる理由について説明することには意味がある。巻末に戦後の内閣支持率の数字(朝日実施)が全部出ていて、調査の頻度や調査法もあわせて載っている。「世論」の変化を実感できておもしろい。