次の首相はこうして決まる

柿崎明二『次の首相はこうして決まる』、講談社現代新書、2008

共同通信政治記者である著者による「首相の決まり方はどのように変わってきたか」のルポルタージュ小選挙区比例代表並立制→選挙で勝てる「顔」としての首相選び→世論調査が首相選びに大きく影響、という図式は、それほど新味のある分析ではないが、小泉内閣以後首相選びの流れが派閥単位から、個々の議員(中心は、並立制成立以後に当選してきた議員)にシフトしてきたことが、政治記者から見て非常に革新的だったことが、いろいろなエピソードをまじえて書かれている。

この本の価値は、そうした大きな図式よりも、政治記者から見た、政治的変化のいろいろなスケッチのおもしろさだろう。RDD方式による調査方法の変化が世論調査の影響力を飛躍的に高めたこと、「次の首相に誰がふさわしいか」の選択肢を調査実施側が決めていることの影響、内閣支持率と選挙結果の関係、選挙における「対立図式」の設定がメディア露出を決めそれが選挙結果に直結するという選挙の「勝ちパターン」の形成、などの指摘はおもしろかった。このパターンからすれば、「自民対民主」の政権選択図式ができていて、しかも麻生内閣の支持率が低迷している状態での選挙は、よほどのことがないと自民党には苦しくなることになるが・・・。

また、世論調査での「人気投票」に近い形で首相が決まることで、もともと首相になる準備がちゃんとできていない人物を首相にしてしまうことの危険性を指摘している点は重要だと思う。