お茶席の冒険

有吉玉青『お茶席の冒険』、講談社、1998

なんでこの本に手を付けたのかというと、檀ふみ檀ふみ茶の湯はじめ』でこの本を知ったのだが、結果的には非常に「あたり」の本である。

著者はお茶の稽古をもう十年ほど続けていて、「初級」の段階を終わって「中級」の稽古をしているという。内容は、稽古や茶会に関するいろいろなことについてのエッセイ。基本的にある程度お茶のことを知っている人が対象のようで、全然知らない人向けにいちいち細かいことを説明している本ではない。

しかし、お茶のことなどまるっきり知らない自分にも、「お茶の稽古はこういうことに気をつけて、こういう雰囲気で進んでいるのか」という風景がよくわかるように書かれている。また文章に衒いや嫌みがなく、読んでいてすいすい頭に入ってくる。著者の筆力と人徳の賜物だと思う。

お茶のめんどうな決まり事をひとつひとつ覚えて(といってもなかなか覚えられないようすだが)、うまくいったり失敗したりすることそのものを著者がとても大事にしていることが感じられる。読んでいる方にも、著者がお茶を楽しんでいることがよく伝わってくる。子供の頃に祖父母が食事のあとで薄茶をたてていたことを思い出す。