敬愛なるベートーヴェン

「敬愛なるベートーヴェン」、エド・ハリスダイアン・クルーガーほか出演、アニエスカ・ホランド監督、イギリス、ハンガリー、2006

劇場公開時にポスターを見たときから、変な表題だなあ(日本語としておかしい)と思っていた映画。原題は "Copying Beethoven" で、いったい何のことかと思ったら、ベートーヴェンの自筆譜を写譜する人とベートーヴェンのおはなし。

最初の場面は交響曲第9番が、初演の4日前になっても合唱パートの写譜ができてないという場面から。4日前に楽譜が上がってないって、それは初見で演奏しろってことですか?なんだかよくわからない。しかし音楽学校の作曲家志望の女子学生が新しい写譜係としてやってくる。ベートーヴェンは最初悪態をついているが、けっこうできる女だとわかってきてこの写譜係を受け入れるようになり、その後二人の交情(情交はなし)が続く・・・という話。

ベートーヴェンは、天才には違いないし、尊敬もされているのだが、奇人である。俺様キャラ爆発で、自己中の塊。途中で写譜係の恋人の展覧会に出かけていって、作品を棒でぶちこわしたりしている。天才は何をしても許されるのだが・・・。まあ耳は聞こえないし、いろいろトラウマを抱えているしで、天才は単に才能が天から降ってきたというわけにはいかないのである。仕事は傑作がばしばしできるが、本人の生活は荒れ放題。このベートーヴェンにあたっているエド・ハリスはなかなか熱演。交響曲を指揮する場面もなんとかやってのけている。この第9の初演の場面が作品の見せ場になっている。演奏は非常によい。

写譜係を演じるダイアン・クルーガーは、美人で頭良し、ベートーヴェンを理解し、奇行も受け入れるという奇特な役。ベートーヴェンの体を洗ってやったりもしていて、色恋はないことになっているとはいえ、なんだか母親みたいである。しかし第9の演奏会で、ステージから指揮台のベートーヴェンに合図を出すというのはちょっとどうよ。うーん。

最後は「大フーガ」を口述で写譜するところで終わり。まあよい音楽が聴けたし、よしとするべきか。