だれでも一度は、処女だった

千木良悠子辛酸なめ子『だれでも一度は、処女だった』、理論社、2009

著者に辛酸なめ子が入っていて、このタイトルだったので、深く考えずに買ったのだが、読んでみると内容のほとんどは、千木良悠子がいろんな人に「処女喪失体験」を聞き書きしてまとめたもので、辛酸なめ子はちょっとマンガを描いているだけである。だまされた・・・。

しかし内容はおもしろかった。10代から70代までいろんな人にインタビューしているのだが、著者自身が書いているように、40代を境界にしてそれより上と下では「処女」というか、自分の性体験を他人に語るということにはっきりとした態度の違いがある。そのあたりについては、宮台真司のインタビューがついていて、そこでわかりやすく説明されている。

それから「女の処女喪失体験」だけではなく、「処女を相手にした男の体験」「ゲイ(男女とも)の処女喪失体験」も載っていて、こっちもおもしろかった。とくにゲイの性体験は、個人ごとにどういうカテゴリーの相手に性欲を感じるかがぜんぜん違っているのでおもしろい。「男、女、ゲイ」の三つの性があって、自分はゲイにしか性欲を感じないという人もいるし、ノンケ相手に初体験という人もいる。

いちばん面白いのは、著者(千木良)自身の母親と祖母に処女喪失体験を聞いているところ。これは聞く方も聞かれる方も相当やりにくそうである。特に母親は露骨に肝心な部分を話すことを嫌がっている。まあ、基本的には匿名インタビューの本だが、著者は実名を出しているので、その母や祖母ということになれば回りの人には匿名じゃなくなっちゃうわけだから、あたりまえか。夫(つまり著者の父)とのことについてはべらべらしゃべり出す(要は単なるのろけ)ところも笑える。

最後に千木良と辛酸の対談がついているのだが、そこを読んで二人が女子学院の同窓生で学年が四年違いということがわかった。まあ進学校にありがちなことだが、ほとんど性体験(というか男との交際体験)のない子供ばかりで、逆にそれが妄想をかきたてるというのは、読んでいてなるほどという感じ。