名将言行録

岡谷繁実(兵頭二十八編訳)『名将言行録』、PHP研究所、2008

「名将言行録」の新訳。といっても、300頁に満たない本なので抄訳である。しかも全訳の約三分の一の分量で、登場する個々の人物は削っていないとあるので、エピソードの内容を削っていることになる。自分は全訳を読んでいないので、どこを削っているかがわからないのだが、十行くらいしか書かれていない項目がたくさんあり、その項目については、おもしろいのかつまらないのかもわからない。

訳者の意図としては、江戸時代の武士が「治にいて乱を忘れず」の心得として読んでいた本を、現代人にわかりやすいように紹介したいということだと思うのだが、これくらい切ってしまうと、本としておもしろい部分もかなり切られているのではないかと想像してしまう。個々のエピソードはけっこうおもしろく、読み物としてはよくできていると思うので、そのあたりを味わいたいと思うのであれば、全訳を読むしかないかなあ。しかし、いわば「昔の戦争のtips」みたいな本なので、個々の武将に関心があるか、戦国期から江戸初期あたりの歴史好きの人には意味があるだろうが、それ以外の人に対してはどうだろう。