鱈外交北朝鮮を行く

須藤新治『鱈外交北朝鮮を行く』、文芸社、2008

北朝鮮で鱈加工事業に関わっていた著者の見聞録。奥付に、「2004年7月に新風社から刊行された単行本に加筆・修正を加えた」となっているが、おそらくほぼ自費出版に近いものだろう。というのが、著者がまったく文章を書いた経験がなさそうな(文章がちゃんとした日本語になっておらず、話題がいろんな方向に飛んでいて、読みにくいことおびただしい)上に、編集者の手も入っていない(編集者が助言していればこんな出来にはならないはず)だろうと思われる本だからである。

内容は、著者の北朝鮮旅行の思い出みたいなもので、参考になるはずの、事業がどのような手順で行われるのか、どういう人や機関が関わるのか、事業の遂行上どのような困難があったのか、といったことの記述があまりにも薄い。どうでもいい接待の様子とか、著者の前半生とか、そういうことにページが割かれていて頭が痛くなる。

事業の結果は当然のようにうまくいっていない。設備が老朽化しており、魚の鮮度を保つための措置もなされていない。外国に商品として売るには不適なものしかできないということになる。北朝鮮での他の外資事業と同じで、必要なものはすべて国外から持ち込まなければまともに事業を進められないという、おなじみの結論。

しかし80頁に満たないこの本を1000円で売るというのはほとんど詐欺である(売れないだろうから、この値段なのか)。書店で内容を見ていれば絶対買わなかったが、ネットで本を買うとこういうことがままある。マイナーな本ではよく起こることなのだが。