丸木位里

丸木位里展」、広島県立美術館

丸木位里といえば、原爆の図。というかそれしか知らないので、会場に(こちらは平常展の方)「丸木位里」とあったのを見て、あーまた原爆かい、と思ったのだが、これは違った。というか、ほとんどが戦前の作品である。丸木は1901年生まれの人なので、戦前の作品が多くあって当然なのだが、ちっとも思いつかなかった。

作品は、といえば、これがなんともいえない世界である。暗い闇の底から声が聞こえてくるような絵ばかり。水墨画でも、風光明媚な風景画とかではなくて、夜の底を描いたような絵ばかりである。丸木位里といえば、原爆を描いたから暗い画風なのだと思っていたが、そうではなくてもともと素地があったのだ。こういう言い方は問題あるが、原爆は丸木にとって「天啓」だったかもしれないと思うようになった。

関連して、丸木の実母である丸木スマの絵が何点か掛けてある。こちらは息子の方とはまったく違う画風で、小学生が写生に行って描いたみたいな絵である。カラフルでいろんな色が動物や植物の形で踊っている。こういう絵を描く母親からどこをどうしたら丸木位里みたいな絵描きが生まれてくるのか、よくわからない。