属国の防衛革命

太田述正兵頭二十八『属国の防衛革命』、光人社、2008

元防衛官僚と軍事ライターの共著。といっても、内容はかなりバラバラで、統一性はない。太田述正の執筆部分は、ブログ記事に兵頭と、別のライターが手を入れたものだという。

太田の執筆部分では、「日本はみずから望んで米国の属国になっているだけ」の部分がおもしろい。確かにそのとおり。アメリカは講和条約締結以後は、日本に属国であることを「強制」したわけではない。単に日本がその地位に何も文句をいわず、アメリカの政策に追随してきたので、その状態が続いているに過ぎない。それを「アメリカに支配されている」とか何とかいうのはおかしなことである。止めようと思えば、それがコストのかかることではあっても、止められるのだ。

他の章では、太田の「「民主主義」インドはアジアの覇権国になれるのか」も面白かった。単純に言って、インドの民主政治は名望家や組織利益の寡頭支配が選挙の衣をまとっただけで、インドの経済発展は、文盲の貧民たちの海の中に浮かんだエリートの島で起こっているだけである。腐敗の程度も尋常でない。中国の内政とインドの内政と、どっちがましかと問われればかんたんに答えられないような代物である。日本は中国への関心はあり、それなりに本は出ているが、インドについては何もないのと同じである。これは今後改善されるのか?

あとは、兵頭の「敗戦後のわが国の軍事出版史をふりかえる」が一番面白かった。軍事関係の本がいつごろ、どのように売れていたのか、それはどうしてか、について、概観している。関心のある人は読んでおくべき文章。