実名告発 防衛省

太田述正『実名告発 防衛省』、金曜日、2008

著者は、1949年生まれ、2001年に仙台防衛施設局長から防衛庁依願退職。その後民主党から2001年参院選に立候補したが落選、その後評論活動のかたわら、防衛省に対する批判を続けている、という人物。

読んでみるとまあひどい話で、防衛省の政官業癒着は随意契約天下りを利用して、何でもやり放題というもの。だいたい契約金額10億円に対して退職者1人を天下りとして受け入れる「了解」が成立しているとされる。政治家も(というより政治家がこのシステムの仕切り)ずぶずぶにシステムに関わっていて、要は皆で税金にたかっているのである。

しかも、安全保障はアメリカ任せという路線のために、アメリカには無条件で追随、言われるままにカネを出しまくりという構造も変わらない。空母艦載機の基地移転も、夜間訓練問題を積み残したままで見切り発車になっているほか、岩国と横須賀の距離が離れすぎているため、艦載機の夜間訓練の一部は厚木でやるほかはないという。

守屋事件が単に個人の犯罪で片付けられてしまい、防衛省と業界の関係に何もメスが入っていない現状を考えれば、自民党政権が続く限りこの構造は変わらないという著者の指摘は妥当なものだろう(民主党政権になれば変わるのかどうかはわからない)。それにしても、このような癒着が実名で指摘されているのに、民主党がこれを国会で追及しないのはなぜなのか?新聞が継続的にこの問題を報道しないのはなぜなのか?わけのわからないことだらけである。