利休にたずねよ

山本兼一利休にたずねよ』、PHP研究所、2008

直木賞受賞作。というのは自分にとってはあまり問題ではないが、千利休ネタの小説というので読んでみた。構成がくふうされていて、切腹の直前からはじめ、一章ごとに時代をさかのぼっていく。章ごとに別々の人物が登場して、それと利休がからんでエピソードをつくる。利休が若き日に美を女との間に見いだした話がラス前に来て、最後は腹を切って終わり、というもの。

話に軽いテンポがあり、さくっと読める。秀吉に切腹を命じられた経緯はさらっと流されていて、単純に秀吉が自分に服従しない利休に腹を立てたというもの。それはいいが、秀吉の造型が単純にすまされていて、いまひとつ利休との関係が浅く書かれてしまっているような気がする。

むしろ後半になるほどよく書けていて、終わりの、利休と高麗渡りで買われた女とのエピソードはとてもおもしろい。最後の切腹をさらっと流すようにまとめたところもきれい。

総じて、上手に書けた小説という感じがする。まあ、お茶をやらない人が利休のことについて深く分かれといってもそれはムリなので、自分にはこういう書き方がちょうどいいくらいなのかもしれない。