移動と表現 変容する身体・言語・文化

「移動と表現 変容する身体・言語・文化」、沖縄県立博物館・美術館

この美術館の開館一周年記念展。ニシムイ芸術村、沖縄からの移住者、移動をテーマとする主にアジアの作家、の三部構成。

このうち「ニシムイ美術村」の作家、安谷屋正義、安次嶺金正、玉那覇正吉らの作品は、昨日のNHK教育日曜美術館」の放送で、「ニシムイ 沖縄・知られざる美術村」のタイトルで放送されていた。この放送は生では見ていなかったのだが、戻ってきて録画分の放送を見たら、ちょうど見たばっかりの展覧会の特集で、ちょっと得をした気分。もっとも、美術村の作家の作品は、この特別展と、平常展に分散しておかれていたし、放送で流れた何点かの作品は美術館の展示には出ていなかったので、番組と展覧会はいちおう別々に制作されたらしい。

この作家はみな故人になっていて、彼らから作品を買っていた米軍の軍医(この人は存命)がインタビューで彼らの思いでを語っている様子が、展覧会場でビデオで流されていた。昔のことを非常に良く覚えていて、知的で画家達のことも作品もよく理解している人。この人の協力で展覧会を開けたようだ。

画家の自画像と、安谷屋の「滑走路」という絵が非常にいい感じに描けていた。テレビと展覧会をいっしょに見ると、戦後沖縄の美術史の一端が、占領下の社会と美術の観点も含めて垣間見られて、なかなかよい企画になっていたと思う。

しかし、テレビの番組の中で、展覧会の企画をした人が「売り絵だから、あまり期待していなかったが、実際に見てみるとすばらしかった」という言い方をしていたのは気になった。アマチュアで趣味で描いている人は別として、プロの画家なのだから、絵は売るために描いているのがあたりまえだろう。相手が占領軍だろうと何だろうと、自分の作品を売っているのだから、自分としてベストをつくすのも、プロの画家であれば当然である。また、企画者は、「アメリカで絵を所蔵している人たちの方が、絵を出品することで、画家が沖縄で占領軍の協力者扱いされ、非難されることを危惧していた」と語っていたが、そんなことが沖縄でもしあるとすれば、非常に変な話だと思う。