石川文洋写真展 戦争と人間

石川文洋写真展 戦争と人間」、沖縄県立博物館・美術館

ベトナム戦争の写真展。サイゴンが陥落し、南ベトナムが消滅してからすでに33年以上。写真も全部白黒である。しかし、この写真は非常にいい。戦場の緊張感が見る方にじかに伝わってくる写真ばかり。米軍、南ベトナム軍、住民が被写体。

「切り取られた肝臓」では、ベトコンの兵士が殺されて、肝臓が切り取られた後の死体が写っている。的の肝臓を食べると戦死しないという風説があったのだそうだ。兵隊のただの妄説なのかもしれないが、ちょっと中国っぽい慣習なのかもしれない。

テト攻勢の後、5月になってサイゴンのチョロンで撮られた写真では、廃墟になったチョロンの街区やまだ戦闘が続いているようすが写っている。ホーチミンシティの真ん中が戦場だったというのは、感慨深い。「愛人 ラマン」の製作時には、昔のチョロンの風景はまだ残っていたのだが、あれは戦火をを逃れて生き残った、ラッキーな建物だったということか。

「飛び散った体」という写真は、パンフレットにはのっているのだが、会場には「青少年への影響を考慮して、作家本人の同意を得て撤去した」とある。パンフレットにのっているのは、擲弾が当たって首と上半身の一部だけがちぎれて残ったベトコン兵の死体をアメリカ兵が、逆さに持っているところ。死体はほとんどボロ切れのようである。まあ、きれいな写真ではないけど、展覧会の入り口のところには、「戦争の悲惨さ」がどうのこうのと書いてあったはず。美術館も、「青少年」をダシに使って、写真を撤去とか、そんなヘタレなことでいいんですかね。やっぱり日本は平和な国だわ、とあきれかえったことでした。