そうだったのか!中国

池上彰『そうだったのか!中国』、ホーム社、2007

池上彰の「そうだったのか!」シリーズの中国編。中国現代史の本なのだが、共産党の成立以後の歴史を描き、農村と都市の格差、軍備拡張政策のような最近のトピックについてもとりあげている。ニュース解説をわかりやすくするという著者の仕事ぶりがいかんなく発揮された好著で、非常にわかりやすいばかりでなく、共産党の歴史が現在の中国理解に欠かせないことがよくわかるような構成になっている。毛沢東専制についてはとくに容赦なし。

基本的に、中国の現政権の「正史」に対して徹底的に批判的な立場をとっているので、そこが評価のポイントだと思う。自分としては、中国の歴史に批判的でありながら、できるかぎり公正な記述をめざす著者の姿勢にはとても好感が持てる。将来の中国の動向については、楽観的な予想はしていないが、これは今後の動向がたのしみなところ。広範に本を渉猟し、現地の取材もきちんと行っている。中国についての入門書として、最も適切な本のひとつだろう。判型がB5なのだが、これだと写真や図が大きくて見やすい。これも読みやすくするための配慮だと思う。