李明博自伝

李明博(平井久志、チョンギョン訳)『李明博自伝』、新潮文庫、2008

原著の出版年は1995年。現代グループの経営から退き、民自党から選挙に出て、国会議員になったところで終わり。ということで、国会議員当選以後の李明博の政治的経歴の話はない。少年期から、経営者として活躍した時期の話が書かれている。韓国発展を支えた経営者のサクセスストーリー。

内容は第二次大戦直後からの韓国の歴史を生きた経営者の一代記、という感じのもの。食べ物にも事欠くような貧窮から身を起こし、夜学を経て、高麗大学に入学。朴政権に反対する学生運動に加わって逮捕。卒業後は現代建設に入社、27歳で取締役、35歳で社長、47歳で会長。人生が韓国の経済発展の歴史とほとんど重なっている。

読んで面白かったところは、経営を進めていく上での韓国政府との対立。この本を読む限り、軍事政権下の韓国政府は、産業発展をリードしたというよりは、ほとんどジャマしかしていないようである。このあたりは、まあそうだろうという感じ。経済のことなどよく知らない軍人が経済指導といっても、そう簡単にいくわけはない。もうひとつは、北朝鮮の経済開発を支援することを通じて統一を志向する強い意欲。このへんはまるっきり空回りというか、機能していないわけだが、李明博北朝鮮に対して持っている基本的な考え方はおそらくそれほど変わっていないだろう。

日本に対する悪口は、ないことはないが、韓国人の本にしては少ないほう。