染め織りのトルキスタン

「染め織りのトルキスタン」、広島県立美術館

日本伝統工芸展をもう一回見に行って(ギャラリートークのある日だったので)、その帰りに平常展示に立ち寄って見たのがこれ。

伝統工芸展のほうは、やはり素人は専門家の解説を聞かなくちゃいけないと痛感。どこで技術が発揮されているのか、知らない人がさらっと見たのではわからないのである。美術館の学芸員が全体を解説する(他の日はそれぞれの出品分野の作家が、自分の関係する分野を解説する)日に行ったのだが、学芸員が言っていたことがおもしろかった。ここは美術館なので展示だけだが、会場にデパートが使われている場合には、質問すれば展示作品の値段を教えてもらえるそうだ。売るための展示でもあるわけで。そうすると、これはいくら、あれはいくら、という値段の質問しか出てこないのでイヤになる、とのことだったのだが、冷やかしで聞く分にはともかく、本当に買うつもりの人が聞く場合には(安いものは数十万円から買えるとのこと)、それは真剣に聞くだろうし、作品を見る眼も真剣になるだろう。

で、それはそれとして、トルキスタンのほう。なぜ「トルキスタンの染め織り」という題になっていないのかよくわからないが、この美術館では中央アジアの織物やアクセサリーをまめに収集していて、定期的に展示しているのである。だいたいが、ウズベキスタントルクメニスタンのもの。一部、ハザラ人やパシュトゥン人のものもある。またトルクメン人は(他もそうなのだろうが)、いろいろと部族ごとに様式が違うらしく、それに従って展示してある。

織物は男性用もあるが、女性用の刺繍が入った着物、特に婚礼衣装に使われる着物がけっこうおいてあって、古いものなので色はくすんでいるが、とても手間がかかっていることは見るだけでもわかる。

それからアクセサリーがけっこうある。ほとんど銀細工(金メッキがしてあるものも多い)で、それに貴石がはめこんである。胸飾りや護符入れ、飾りボタンなどなど。衣装にアクセサリーをつけたときの写真が何枚か展示してあるが、これがとても味があっていい感じ。石はそんなに高価なものではなさそうだが、銀細工はこまかく、また衣装にとても合っている。着飾った娘のはにかんだような表情もいい。