中国初恋

さくら剛『中国初恋』、幻冬舎、2007

著者の『三国志男』がおもしろかったので、これも読んでみることにした。表題は「中国」となっているが、ぜんぜん中国の話はなく、内容はまるっきりアフリカ旅行記。それもケープタウンから東アフリカ諸国(南アフリカジンバブエザンビア、マラウィ、タンザニアケニアエチオピアスーダン、エジプト)を北上し、エジプトからヨルダン、イスラエルまでの行程を全部陸路、バスと鉄道を乗り継いで行くという恐ろしい旅である。

著者は自称「中程度のひきこもり」で、英語はほとんどできないといっているが、そんな人が普通アフリカ縦断旅行を計画して、実行したりするか?本文中では「失恋のショックで」といっているが、そんな程度のことでこれだけの旅行(3ヶ月かかったとのこと)ができるのだから、たいへんである。

旅そのものも普通には進まず、旅行開始直後に全財産を盗まれてしまったりしている(TCにしておいた分は後で再発行を受けられたので、旅は継続)。それにほとんど来ない上に、舗装されていない道を何時間も行く満員のバス旅行、まずい食事、蚊、ゴキブリ、南京虫、最悪に汚いトイレ、絶えず襲う下痢、といったものの連発。著者の筆はずーっとボケっぱなしだが、そうでもしないとやってられないだろう。

しかし最後のところで著者はなぜかパレスチナ自治区(西岸地区)に入るのだが、ここでのシリアスで殺伐とした出来事には、著者のボケがマッチしていない。話が深刻すぎて、笑えない。結果的にすべっているのだが、著者としては、ここでの経験は書かずにはいられなかったのだろう。

とにかく内容はおもしろかった。社交嫌いで、汚いところはキライ、ほか、自分との共通点を著者にたくさん見つけたのも、ひかれたポイント。しかし、自分は南アフリカかエジプトの都会か観光地以外はムリだろう。バスに乗っている最中に下痢をもらしたりしたらと思うだけでめまいがしそう。しかしこの本には同じような旅程を自転車で旅している高校を出たばかりの子どもも出てくる。世の中には本当にいろんな人がいることに感心する。