放談の王道

『放談の王道』呉智英宮崎哲弥時事通信社、1999

呉智英宮崎哲弥の対談本。特に後半部、オウム真理教事件にたびたび言及されている。麻原逮捕が1995年5月で、対談時はまだ余波は相当残っていただろう。この本が仏教を中心とした宗教、個人、社会といったものを中心的なネタにしているので、オウム事件が取り上げられるのは当然といえば当然か。

仏教については、宮崎が説明し、呉が突っ込む形で、ある程度詳しく、またわかりやすく論点があげられていて、その部分は特に勉強になった。やっぱり仏教はもうちょっと体系的に読まないと、ちゃんとはわからない。また、死への不安というか、自分の生死への疑問をかなり強く持っている人に対して開かれているので(これは前に読んだ、南直哉の本でも強く感じたことだが)、内発的な動機がない人がお勉強で入るのはかなりむずかしいと感じる。

対談している二人とも、学者や評論家というのとはちょっと違う、知識人の社会的役割ということにとても自覚的な人なので、それについて語っている部分は、すっと腑に落ちる。言い方はきつい二人だが、知的な姿勢としてとても謙虚な人たちで、読んでいて清々しい。