創価学会の研究

創価学会の研究』玉野和志、講談社現代新書、2008

カバーにでかでかと「批判でも賞賛でもないはじめての学会論!」という大きなキャッチコピーが書かれていて、え?そうなの?と疑問に思う。内容は創価学会社会学的研究(つまり、教義の宗教的な内容にはあまり立ち入らず、学会という教団の社会的な位置づけを問題にしている)である。

他の本でも読んだ内容が多いのだが、本書の中に創価学会についての学術的な研究をサーベイした章がある。それに一番驚いたのだが、1960年代から90年代までの長い期間にわずか10編しか取り上げられていない。しかも、多くの研究の中から10編が選ばれたのではなくて、もともと10編しかないのだという。著者は社会学者なので、そういう観点からの文献だけを選んだのかもしれないが(それにしては梅原猛の本はそういう文献ではない)、創価学会のような大きな団体についての学術研究が10編だけって、ほんとですか?事実だったらびっくりである。それくらい創価学会は、研究者にとっても「簡単に取り上げられないテーマ」ということなのだろうか?

終わりのほうの章、特に結論部分は分析として浅く、ちょっとどうかという内容。学会員の所属階層にしてもあまり実証的な話をせずに、「自民党支持者の一部と似通っている」とか言っている。自民党の支持者にはいろいろな層がいるから、そういうことがあってもおかしくはないが、そのことと自民、公明連立の話を短絡的に結びつけるのはどうか。公明党の支持者イコール学会員だと簡単に言うことはできないと、著者自身、前の部分で言っていたはずだし。

また学会の教理の分析にそれほど深く入っていないのに、格差是正とか福祉国家とかいうテーマと学会の関係を唐突に持ち出すことにも戸惑う。ここでも政治組織としての公明党と、教団としての学会をきちんと区別して議論していないし、そういう問題を結論で扱うために十分な材料が、この本のそれまでの章で示されていない。部分的におもしろいところはあったが、内容がちぐはぐで、まとまりに欠けている。