語る禅僧

『語る禅僧 I am a ZENSO』南直哉、朝日新聞社、1998

著者がCS放送トーク番組に出演していて、その話が非常に面白かったので読んでみた。これは非常に「アタリ」の本である。「論座」の連載をまとめ、加筆した本だが、いきなり永平寺スロベニアから出家したいとやってきた若い男の話からはじまり、著者の出家の由来、仏教や社会的事件についての著者の考えがつづられていく。

自分がこの本を読んで一番納得させられたのは、「悟り」についての記述。もちろん著者は悟りを「説明」しているわけではないのだが、悟りというのは自分が変わることのきっかけであり、だから悟ったと語った者は、その後に自分が実際にどう変わったかということを示さなければならない、という著者の文章に非常に説得力を感じる。道元の「身心脱落」を超越的な体験ではなく、そういう言葉をつかんだということなのだと説明する著者の立場も非常に腑に落ちる。

伝統仏教の中に身を置きながら、伝統仏教自体に対して非常に率直な人であり、なによりも明晰な思考で直截に語る人である。他にもいろいろ本を書いているので、読んでみることにする。

どうでもいいのだが、Amazonにこの本が古書で出ていて、価格が30000円とついていて仰天した。みんな図書館を使おうよ。