菌類のふしぎ

特別展「菌類のふしぎ きのことカビと仲間たち」、国立科学博物館

ちょっとおもしろそうなので見ておかなくては、と軽い気持ちで行ってみたら、チケット販売窓口の時点でけっこうな列が・・・。こんな展覧会でなんで?と一瞬思ったが、「もやしもん」のことを忘れていたことに気がついた。ポスターにも「もやしもん」キャラのイラストが使ってあったのにね。

中には当然ながら、やたらたくさんの人がいて、列はじりじりとしか進まず、列の後ろから展示物を眺めるのも一苦労。客は若い人(含む中学生以下)がやたら多し。子ども連れの親子もけっこういた。

しかし、この展示、「もやしもん」のマンガだけ読んで見に行ってもけっこう挫折すると思う。最初のコーナーでは、この展示の対象が、キノコ、カビ、その他の「真菌類」=真核生物としての菌界に属する生物だという説明があり、プレゼンの仕方も字を追っていくもの。これは高校で生物をやっている程度の人を対象にしているということである。小さい子どもは、わけわかんないことになってるだろう。もっとも、後の方ではいろんなキノコの標本(実物を樹脂で固定した、リアルできれいなもの)とかも出てくるし、醸造工程のようすや種麹(もやし)の生産の様子をまとめたビデオなんかもあるので、マンガに釣られてきた来た人もそれなりにたのしめるようになっている。

おまけに、展示物の案内役のキャラクターには、「もやしもん」のキャラクターが大々的に使われていて、壁にはプラスチック製のキャラクターがバンバン貼り付けてある。しかも作者自身が展覧会場に来て、壁に「落書き」と称するイラストと言葉をいっぱい書き込んでいて、来場者は携帯カメラやデジカメでパチパチそれを撮っていた。展示会場の最後にある物販コーナーでは、「もやしもん」グッズが大々的に売られていて、カプセル入りのガシャは全部売り切れていた。おそろしい。

自分としては、真菌類のいろんな姿が見られてとてもおもしろかった。昔の真菌類には、高さ9mまで伸びていたものもあるそうで、まるで「腐海」だなー、と思ったが、真菌類は自分で栄養を産出せず、動植物(主に植物)に寄生して栄養をとっているので、基本的に菌類だけでできている、植物のない森というものはないのである。考えてみれば、あのマンガは、植物がない状態でどうやって酸素が生み出されてるのかとか、SF的にはまずい設定がいっぱいあったなあ。だからといってマンガそのものの価値がそれで損なわれているわけではないが。

それから展示の終わりの方に、菌類とアートのコーナーがあって、そこに「きのこ画家」と称する小林路子という人の絵がたくさん並べられていて、それが絵というより図鑑のイラストに近い、非常に細密なものだったのでかなり引きつけられた。物販コーナーに著者サイン入りのきのこの絵本があってついつい買ってしまった。