結婚失格

『結婚失格』枡野浩一講談社、2006

「書評小説」というからどんなものかと思ったら、一章ごとに著者の読んだ本についての短評がおりまぜてある、というもの。取り上げられているのは、坂崎千春『片想いさん』、松尾スズキ『同姓同名小説』、島本理生『リトル・バイ・リトル』、中原昌也『エーガ界に捧ぐ』等々。

といっても、この本で書評部分はどっちかといえばどうでもよく、基本は著者の離婚にからむゴタゴタ日記を小説仕立てにしたというもの。わけのわからないうちに妻から離婚を請求され、子どもには会えず、相手側の弁護士には脅かされ、もう悲惨な日々である。特に子どもに会えないのはこたえるらしい。著者の元妻は漫画家の南Q太で(巻末にはちゃんと実名で紹介されている)、この本だけ読んでいると何か極悪人のように思えるが、離婚の当事者から見ればそんなものかもしれない。もちろん著者や妻の職業や、周囲の人々のエピソードは実際とは変えてあるのだが、変えてある部分がいちいち巻末に列挙してあると言うことは、それ以外の部分は「本当です」ということらしい。

離婚を明るく乗り切れる人というのもなかなかいないだろうとは思うが、読んでいるほうがかなり鬱になるような話。和解の条件を破って元妻が子どもに面会させないので、子どもの幼稚園を探し出して会いに行くが、子どもの方は半ば著者のことを忘れかけているというくだりにはなんともいえない寂寥感を感じる。ひととおり小説の方を読んでから、さらに巻頭に掲げてある短歌を読むと、著者のじめじめとしたやるせなさが伝わってきて、味わい深い。