柳生刺客状

柳生刺客状』隆慶一郎、講談社、1990

隆慶一郎名義での小説を読むのはこれがはじめて。5編からなる短編集だが、まず表題作の「柳生刺客状」。設定があまりにぶっとんでいて、「え?え?」といっているうちに話が終わってしまった。著者の柳生ものを他に読んでいればちゃんと話がつながるのだろうか?強引な設定の説明に終始しているような話で、ちょっとついていけない。

他の作品は、細かい描写や設定で読ませる小説という印象。「死出の雪」は寒々とした風景と、仇討ちについての細かい描写がよい味をかもしだしていて、好印象。しかし、全般的に、脚本作品にあるような、周到で緻密なストーリー展開にはあまりお目にかかれない。

隆慶一郎の小説は全般的にこういうものなのか?それとも最初にこれを読んだのがよくないのか?『吉原御免状』か、『一夢庵風流記』か、もうちょっと代表作とされるものを読んでみてから評価を決めようと思う。