生活と芸術——アーツ&クラフツ展

「生活と芸術——アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで」、京都国立近代美術館

向かいの京都市美術館のほうは「芸術都市パリの100年展」で、ちょっと内容がくどい感じだったので、こちらを見ることにした。アーツ・アンド・クラフツというのは日本で言う民芸みたいなもの。といってももちろん話は逆で、民芸運動のほうが、アーツ・アンド・クラフツを真似しているのである。

19世紀後半にデザインを改善して、生活の中にデザインを生かしていこうとした人たち、ウィリアム・モリスとかジョン・ラスキンといった人たちの作品や考え方についての展示物が並べられている。ただ彼らが批判していた、趣味の悪いデザインがどういうものかということがいまひとつわからないのと、アール・ヌーボーアール・デコのデザインとかなり共通点があって、自分自身はそういうものが好きじゃないことがあって、このデザインが生かされているものを家におきたいかといわれると、ちょっと考えてしまう。たぶん、イギリスの19世紀から20世紀の生活やその風景のコンテキストがよくわかっていないと、これを評価するのはむずかしいだろう。

見所はイギリスのアーツ・アンド・クラフツそのものより、その派生物としての民芸運動のほうにあって、三国荘の一室が再現されている。柳宗悦のコレクションや、民芸運動に参加した人たちの作品が部屋いっぱいにかざられていて、こちらは見ていてほっとするものがある。やっぱり自分は日本人なんだということを再認識させられる。「刷り込み」は、意識の下から効いてくるからあなどれない。