江利子と絶対

江利子と絶対 本谷有希子文学大全集』本谷有希子講談社文庫、2007

大上段に構えた表題とは裏腹に、文庫で200頁いかない短編集。三作収録されているが、著者あとがきにあるとおり、作風はまるっきりばらばら。しかしどれもおもしろい。

一作目「江利子と絶対」はいかにも本谷有希子っぽいつくりだが、これが小説第一作という。書き方が安定している。「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」とかなり共通点がある。

三作目「暗狩」はよくできたホラー。本谷有希子がこういう普通の小説を書くとは思っていなかったので驚いた。しかもかなりの完成度。映画になってもおかしくない。

薄い本だがかなり楽しめる。本谷有希子を読んだことがない人にもおすすめ。