ほんたにちゃん

『ほんたにちゃん』本谷有希子太田出版、2008

太田出版から出ている「本人本」シリーズの一冊。いっしょに出たのは池松江美『男性不信』である。こっちも読んでいるので、いずれ書くが、小説ではあるが「本人」があからさまに出ているようなテイストの本、ということらしい。

主人公は田舎から出てきた写真専門学校の学生。自意識だけが異常に高く、自分は他のバカどもとは違うと思っている。しかもめちゃくちゃハイテンションで、頭の中は妄想だらけ。自分で「綾波レイ」とか言ってるし。もう読んでる途中であまりのイタさに頭痛がしてくる。

そんな主人公に、飲み会でメジャーな「アーティスト」からモデルになってくれと頼まれるといういきなりのチャンスが訪れる。主人公はハッタリをかまして、「アーティスト」の気を引こうとするが、そんな子供だましの手は当然通じない。さっさと追い返されるのだが、めげない主人公は自分から鍋物セットと自分の体を手土産に再度逆襲に出るのだった。

この先は書かないが、結末はさらにおもしろい。イタさをパワーに変換する著者の力業はただものではない。「痛々しさで死んだ人間なんていないよ」という終わりの言葉はまさに真実。読み終わった後、何とも言えない恥ずかしさを読んでいるこっちが感じさせられるところが、なんとも気持ち悪い。


それと、やっと瀧波ユカリ『臨死!!江古田ちゃん』の3巻を借りて読むことができた。この巻がいちばんおもしろい。瀧波ユカリの筆先には、なにかが下りてきてるみたいである。4巻が出るのは当分先なのがかなしすぎる。