千利休

千利休清原なつの本の雑誌社、2004

清原なつの千利休伝。じつは最近まで清原なつのはわたしの記憶から飛んでしまっていた人だった。昔は大好きで「ぶ~け」もよく読んでいた(昔はちゃんと月刊誌も読んでいた時期があったのだ)のだが。

それが、筒井康隆家族八景』を漫画化したものが単行本になったことを偶然知り、それで調べてみるとこの本が出ていることを知ったというしだい。10年ぶりの出版だったのだそうだ。別に本職を持っているようなので、時間がかかるのはしかたがないか。執筆に4年かけたとインタビューでいっていたし。
http://books.yahoo.co.jp/interview/detail/31457484/01.html

読んでいない作品も相当あることがわかったので、これから手に入れて少しずつ読んでいこうと思う。この人、1956年生まれだったということもはじめて知った。まあ1970年代から描いている人だから当然なのだが・・・。なにかタイムリープしたような感じだ。

で、この本なのだが、非常にまじめに描かれた千利休伝。わたしも千利休については通り一遍のこと以外知らないし、だいいちお茶のことがわからないので、内容の正確さはわかりようがないのだが。それにしても千利休がまだ若い時期の堺商人のようすからまめに描いている。雑誌連載ではなく描き下ろしだが、本来雑誌で広告スペースにあてられるところに、茶道関係の用語解説がついている。これが道具のことなどがほとんどわからない人(含自分)にたいへん親切。著者はこれを描くまで、茶道の歴史とかほとんど知らなかったようでほとんど一から調べたことがさいわいしている。あとがきで「千利休の『芸術』は書けていません」といっている通り、描けない部分に深入りしなかったことも成功の理由だと思う。前に見た映画の『千利休 本覺坊遺文』とかもうわけがわからなかったし(わかる人にはわかるのだろうが)。

清原なつのの絵柄が、このお題にとても合っている。巻末にペーパークラフト用につけられている「待庵」起こし絵図もサービス精神満点で気持ちよし。