日本の10大新宗教

『日本の10大新宗教』島田裕己、幻冬舎新書、2007

日本のおもな新宗教を取り上げて宗教社会学的に描いた本。取り上げられているのは、天理教、大本、生長の家天照皇大神宮教と璽宇、立正佼成会霊友会創価学会世界救世教神慈秀明会と真光系教団、PL教団真如苑GLA。章建ては10章だが、上記のように類縁、派生関係にある教団は1章にまとめられているので、「10大新宗教」というわけではない。著者はあとがきで、金光教、善隣教、阿含宗の三つは入れたかったのだが、10にしぼるために落としたと書いているが、この三つは確かに取り上げてほしかったところ。13大新宗教でもぜんぜん問題ないではないか。

そこは残念だが、内容は充実していてどの章もとてもおもしろく読める。いちばんのポイントは、やはりそれぞれの教団が発生したきっかけになった事件の描写。そこらへんの馬の骨だった人たちがいきなり宗教をはじめるのだから、当然ただ事ではない経験なり、啓示なりがある。信仰のない人には自分も含めて、完全にいっちゃってるとしか思えないようなことだが、宗教的経験というのは凡人にははかりがたいおもしろさと深みがあるのだ。

また教団間の派生関係や、類似した起源をもつ教団の教義についてもていねいに説明されていて、ここで取り上げられている教団が、既存宗教の複雑な変奏として成立したことがわかる。今まで創価学会立正佼成会霊友会の相互関係などまったく知らないでいたので、とても勉強になった。要するにここで取り上げている教団のほとんどは神道と仏教のどちらかまたは両方の影響下にあって、そのもとは古くは明治期の神仏分離政策による「宗教」の創出というところにいく、ということである。

記述内容は、各教団にそれなりには配慮しているのだろうが、都合のいい部分だけをとりあげて書いているのではなく、そういう意味でおおむね公正に書くことに気をつけているようだ。参考文献リストもきちんとしている。