柳宗理 ~手から生まれるかたち~

柳宗理 ~手から生まれるかたち~」、広島市現代美術館

柳宗理の台所用品や椅子はいろんなところでよく見るが、こうした形でいろいろな作品を展覧会の形で見ると、また違った印象がある。まず、柳のデザインが非常に幅広い範囲をカバーしていることに驚く。身の回りの物だけでなく、橋梁やトンネル、高速道路の料金所のような公共建築物、横浜市営地下鉄のゴミ箱、洗面台、キオスクほかの駅内設備、デパートの案内表示のようなものまで、「実用品」の広い分野で作品をつくっている。
もうひとつ驚くのは制作の方法。「手から生まれるかたち」というタイトルのとおり、柳はデザインを図面引きから始めるのではなくて、まず紙、木、石膏、発泡スチロールなどを使って手で模型をつくるところからはじめ、そこからさらに大きな模型を作り、それを図面に落としていく。こうしたやり方をとる理由は実物に近い形を作ってみて、実際の使い勝手を試しながら修正していくことを通じて、アイディアを改善していくためだという。こういう方法だと、複雑な曲線がたくさんできるので、図面を引くのが大変になるし、それを生産工程に移すのも大変になる。大量生産品というよりは職人の作品みたいなものになる。手抜きをせずに使いやすいものを作るという単純なことが、どれほど多くの労力を必要とするかということがよくわかる。
出かけた日の展覧会ではギャラリートークがあったので、以上のようなことを展示物を例にしていろんな角度からていねいに説明してもらえた。帰りに片手鍋を一つ買って帰った。